2024年ノーベル生理学・医学賞特集
「マイクロRNAとその転写後遺伝子制御の仕組みの発見」
2024年のノーベル生理学・医学賞は、マサチューセッツ大学のビクター・アンブロス教授とハーバード大学のゲイリー・ラブカン教授が「マイクロRNAとその転写後遺伝子制御のメカニズムの発見」に寄与した功績を称え、授与される予定です。2023年には、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発に大きく貢献したペンシルベニア大学のカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏が受賞したことに続き、今年はマイクロRNA(miRNA)の研究が表彰される結果となりました。これを機に、トレンドとなっているマイクロRNAが遺伝子制御にどのように関わり、その発見がどのような恩恵をもたらすのかを探ってみたいと思います。
目次
3. 「マイクロRNAとその転写後遺伝子制御の仕組みの発見」の素晴らしさとは
1.マイクロRNA(miRNA)とは何か?
マイクロRNA(miRNA)は、メッセンジャーRNA(mRNA)と同じRNAの一種ですが、mRNAと比べて非常に小さく、タンパク質合成の情報を持っていません。しかし、mRNAによって合成されたタンパク質が、状況に応じて適切に調整されることで、細胞やそれが集まって形成される組織・臓器が正常に機能します。この「適切な調整」を行う重要な役割を果たしているのが、マイクロRNA(miRNA)です。
2.転写後遺伝子制御の仕組み
マイクロRNA(miRNA)は21-25塩基(nt)長の1本鎖RNA分子であり真核生物において遺伝子の転写後発現調節に関与します。ヒトゲノムには1000以上のマイクロRNA(miRNA)がコードされていると考えられています。マイクロRNA(miRNA)はその標的マイクロRNA(miRNA)に対して不完全な相同性をもって結合し、一般に標的遺伝子の3’UTRを認識して、標的マイクロRNA(miRNA)を不安定化するとともに翻訳抑制を行うことでタンパク質産生を抑制します。マイクロRNA(miRNA)が介する転写抑制は、発生、細胞増殖および細胞分化、アポトーシスまたは代謝といった広範な生物学的プロセスに重要な役割を担うことが知られています。
3.「マイクロRNAとその転写後遺伝子制御の仕組みの発見」の素晴らしさとは
現在までにヒトには約2700種類のマイクロRNA(miRNA)が見つかっています。マイクロRNA(miRNA)は特定のがん型、かつ特定のステージにおいて特異的な発現様式を示し、また多数の疾患やウイルス感染において重要な役割を担うことが報告されています。これらの結果はマイクロRNA(miRNA)が疾患診断の新規バイオマーカーや予後マーカーとして機能する可能性や、マイクロRNA(miRNA)を用いた遺伝子治療の可能性を示唆するものといえます。現在、RNAなどの核酸を医薬品として用いる「核酸医薬」と呼ばれる次世代の医薬品開発が、臨床応用に向け世界中で展開されています。今回の発見は「核酸医薬」という次世代の画期的な医薬品開発のもととなるものですが、もっと根本的には、ヒトを含む多細胞生物にとって不可欠である、遺伝子制御の全く新しい原理を明らかにした素晴らしい発見と言えます。
4.サイサチ厳選!受託サービス・製品
PickUP マイクロRNA(miRNA)!
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Listillカタログ【マイクロRNA(miRNA)】関連試薬
ListillカタログではマイクロRNA(miRNA)抽出、キット、標的物質各種を取り揃えております
GeneTools, LLC miRNA 標的 Morpholino オリゴ合成受託サービス
microRNA(miRNA)を標的としたモルフォリノオリゴの設計および合成を行う受託サービスです。RISC に取り込まれるGuide 鎖を始め,pre-miRNA配列の6 種類の部位から標的配列を選択し,合成します。
DNAチップ研究所 QIAseq miRNA-Seq(small RNA-Seq)
遺伝子発現に大きく影響を与えることが知られているmiRNAやスプライシングに関わるとされるsnRNAなどのSmall RNAを次世代シーケエンサーにより網羅的に解析します。
その他の受託サービス
多岐にわたるマイクロRNA(miRNA)関連研究のサービスはmiRNAの抽出解析からターゲット検証まで幅広い実験サービスがあります。ご自身の研究の段階に応じた受託サービスを選択することが可能です。
必要な実験装置
マイクロRNA(miRNA)自動抽出から自動in situハイブリダイゼーションまで各段階にあったmiRNAに照準を合わせた機器が選択可能です。