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【特別インタビュー】がん研究の最前線「がんがもたらす全身病的代謝変化」をとらえる!

2024年3月7日 実験医学コラボ
 

河岡先生特別インタビュー
『現在の研究に至る経緯と今後の展望について』

本インタビューでは実験医学特集を企画された河岡先生の研究について様々な角度でお伺いさせて頂きました。
現在の全身がん・代謝研究にたどり着いた経緯、研究のポイント、分野を越えた今後の日本社会を見据えた展望など…研究職を目指す人、研究に関するすべての皆様にご覧頂きたいインタビュー記事となります。

研究テーマまでの道のり

研究分野の遍歴、様々な経歴を経て、現在の東北大学加齢医学研究所 生体情報解析分野 准教授に2021年にご就任。なにがターニングポイントとなり、現在に至るのか、、、まずはそこをお伺いしました。

どの環境においても「自分にとって面白い」を追求し続ける姿勢

「音楽(合唱)に没頭するあまり、進学振り分けが農学部限定だった…」と話す”ちゃーりー”こと河岡先生、
河岡先生の研究姿勢は、どの環境でも「自分にとって面白い」を追求し続けるものです。昆虫学(カイコ)・生化学というバックグラウンドを持ちながら、「がんに起因する不調に関する研究」や「概日リズム撹乱」、「エンハンサー遺伝学」、「デバイス利用の生体影響に関する研究」など多岐にわたります。

動線確保と実験の「しやすさ」を最優先とされた東北大学のラボは、
洗練されており、まるでモデルラボのようでした。

アメリカでの研究経験を経て今までにないチャレンジへ

2012年には、分子生物学の黎明期に大きな役割を果たしたコールドスプリングハーバー研究所に憧れて渡米し、そのコールド・スプリング・ハーバー研究所でがんの研究に従事しました。そこで、がん研究の厳しさと規模の大きさを知り、「普通の視点ではなく、自分独自の視点」の重要性に気づきました。帰国後はJST ERATO 佐藤ライブ予測制御プロジェクトのグループリーダーとして、自身がこれまでにやってこなかったことに挑戦する環境で経験を積み、それが河岡先生の研究の基盤となっています。
現在も、京都大学や東北大学において、自身が「面白い」と思えることを追求し続けています。

現在の研究のポイントそして、これからのこと

現在の研究における重要な点及び、ご自身の研究分野以外の注目されている点もお伺いしていました。広い視野をお持ちの河岡先生ならではのご意見をお聞きする事ができました。

「サンプリング」の重要性と課題

重要なサンプリング行程を担っている、ラボ内の一室です。
床の色、インテリアにもこだわりがあるそうです。

マルチオミックス解析におけるポイントとして、「サンプリング」の重要性と課題について教示いただきました。
サンプリングにおいて、「結果に影響しうる交絡因子 (採取時刻など)」を考慮して研究を設計することが不可欠だと指摘しています。データから情報を正確に抽出するためには、より精度の高いサンプルの採取が必要です。
疾患群とコントロール群の比較を行う際には、「どのように保存されたサンプルか」だけでなく、「サンプルの採取タイミング」「採取環境」など、さまざまな要因がパラメータに影響を与える可能性があります。真の差異を追求するためには、これらの要因を適切に理解し、考慮することが重要です。
こうした課題を理解し、サンプルの収集を実践することができる共同研究者は、河岡先生にとって非常に貴重で大切な存在だと語ります。

今後の日本社会を見据えた「教育学」

溢れかえる情報過多や日本のホワイト化に起因する日本弱体化の未来を真剣に憂いておられ、「成熟した大人」を育てるために、生命科学の観点から何が重要かを解明しようとしています。デバイス利用の生体影響という観点から、国立研究開発法人 科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」という課題に取り組んでいます。
「便利なモノ」の本質と人々への影響を正確に理解し、「どのように使うかを考える力」をはぐくむことが重要だと考えています。

河岡先生の研究を支えているシステム

ラボ内の専用部屋に設置された研究の”要”

島津製作所 LC-MS

上記 ムーンショット型研究開発事業「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」という課題の「生体影響調査」において、オミックス解析対象に「代謝物 (メタボライト)の網羅解析」があります。
河岡先生の研究室では九州大学の 和泉先生のプラットフォーム(Unified-HILIC/AEX/MS)※を用いて、異なる極性の代謝物を一挙に測定しています。
島津さんは導入後のアフターフォローも手厚く、新しい課題に取り組まれる際に親身にサポートしていただける存在となっているようです。

※参考:国立研究開発法人 科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業 プログラム紹介 目標1 誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現 成果概要

https://www.jst.go.jp/moonshot/program/goal1/appeal/11_ishiguro_ap06.html

羊土社「実験医学」3月号ご紹介

河岡先生が企画された実験医学3月号「がんと全身性代謝変容〜がん悪液質を再定義し、代謝・免疫の変調への早期介入をめざす」では、がん悪液質に対する研究における様々な記事が掲載されています。最新研究の最前線を知れる一冊となります。

実験医学3月号購入申し込みフォーム

今回ご紹介の羊土社「実験医学3月号」をご購入希望の場合は
フォームを記入の上送信ください。
追って担当営業よりご連絡申し上げます。

特集概論

がん悪液質はがんを宿した個体の典型的な終末像である。個体が痩せ、衰弱し、死に向かう像だ。がん悪液質研究は、この終末期のイメージにフォーカスしてきた。これに対し、本特集では、がんが宿主の臓器や細胞のもたらす病的な変容の全体をがん悪液質として捉え直す事を提案する。旧来のがん悪液質の定義に該当しない変容の中に、制御可能で、かつ、その制御が全身状態の改善やがん治療の補助に有効でありうるものがあることが分かってきたのだ。これら最新の研究を概説し、がん悪液質という言葉が手遅れを意味しないという認識を確立したい。

引用:『実験医学 2024年3月号 Vol.42 No.4 がんと全身性代謝変容 がん悪液質を再定義し、代謝・免疫の変調への早期介入をめざす』概論「がん悪液質再考:最新研究に基づく定義の拡張」より

https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758125772/508.html

あとがき

東北大学 加齢医学研究所 生体情報解析分野 の皆様
(&セイミスタッフ)
左から3番目がインタビューをさせていただいた河岡先生

今回、サイサチを飛び出し東北大学加齢医学研究所のラボへお伺いさせて頂きました。
様々な経験を経て、さらなる挑戦を続ける河岡先生のお姿に感銘を受けました。

お忙しい中、快くインタビューにご対応頂いた河岡先生、ご案内頂いたラボの皆様、本当にありがとうございました。

取材協力:東北大学加齢医学研究所
     同研究所 生体情報解析分野

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