2020年3月6日より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかる臨床検査が『保険適用』となりました。
実は、この『保険適用』、医療機器認定を受けている装置だけでなく、研究用途の装置も保険適用の対象となることを知っていましたか。
現在、サイサチで取り扱っているリアルタイムPCR関連機器も『保険適用』となっています。下記より対象となるリアルタイムPCR関連機器を確認できるので、チェックしておいてください。
⇒ 保険適用可能! リアルタイムPCRに関する機器・装置の一覧を見てみる
目次
- そもそも「PCR検査」とは?
- 新型コロナウイルス感染症に関する「3つの検査」の違いは?
- 保険収載された遺伝子検査の手法はこの2種類!
- 「リアルタイムPCR法」とは? その特徴を理解しよう
- 「PCR検査」の実施に求められる検査環境
1.そもそも「PCR検査」とは?
今回の保険適用の対象範囲について正確に理解するため、ここで改めて「PCR検査」について整理しておきましょう。
現在、新型コロナウイルス感染症に関する検査は、次の3通りの方法があります。
- ウイルス遺伝子(RNA)の有無を検査し、現在の感染状況を調べる「遺伝子検査」
- 抗体から抗原(ウイルスが持つ特有のタンパク質)を検出し、現在の感染状況を調べる「抗原検査」
- ウイルスに対する抗体の有無を検査し、主に過去の感染歴を調べる「抗体検査」
マスコミ報道などで言われている「PCR検査」とは、上記の「遺伝子検査」のいち手法である「リアルタイムPCR法」のことを指しています。
2.新型コロナウイルス感染症に関する「3つの検査」の違いは?
遺伝子検査 | 抗原検査 | 抗体検査 | |
---|---|---|---|
検査の目的 | 現在ウィルスに感染しているかを調べる | 現在ウィルスに感染しているかを調べる | 過去にウィルスに感染していたかを調べる |
調べるもの | 新型コロナウィルス特異的なRNA遺伝子配列 | 新型コロナウィルス特異的なタンパク質(抗原) | 新型コロナウィルス特異的なタンパク質(抗原) |
検査精度 | RT-PCR 陽性一致率90%以上 陰性一致率100%(リファレンス:感染研試験結果) | エスプライン SARS-CoV-2 陽性一致66.7% 陰性一致100% (リファレンス:RT-PCR法) | イムノクロマトグラフィーキット 陽性一致率83%以上 陰性一致率91%以上(リファレンス:CLIA (化学発光免疫測定) 法) |
判定時間 | 1~5時間 | 30分程度 | 30分程度 |
検体 | 鼻咽頭、鼻腔ぬぐい液・唾液・痰 | 鼻咽頭、鼻腔ぬぐい液 | 血液 |
「遺伝子検査」は、新型コロナウイルス感染症に関する代表的な3種類の検査のうち、感度は概ね90%以上、特異度はほぼ 100%とされており、もっとも高精度な手法のひとつとなっています。
陽性・陰性の確定診断に用いられているのも、他の検査方法と比較し精度が高いことが理由です。
3.保険収載された遺伝子検査の手法はこの2種類!
保険収載化されている遺伝子検査は、PCR法とLAMP法の2種類です。
いずれも高感度であるため、新型コロナウイルス感染症の流行が発生して以来、確定診断に長らく利用されています。
PCR法 | LAMP法 | |
---|---|---|
検査方法 | ウイルスの遺伝子本体であるRNAを逆転写して精製したcDNAを増幅して検出する方法です。10コピー前後の遺伝子が含まれていれば検出できます。 | ウイルス遺伝子の検出までの工程を1ステップ・一定温度で実施可能な遺伝子検出法です。短時間且つ一定温度で遺伝子を増幅するため、簡便な機器のみで実施ができます。 |
使用機器 | RT-qPCR装置 | リアルタイム濁度測定装置 |
検体 | 鼻咽頭、鼻腔ぬぐい液・唾液・痰 | 鼻咽頭、鼻腔ぬぐい液・唾液・痰 |
処理検体数 | 96~384 | 16 |
ウイルスの 抽出精製処理 | 必要 | 必要 |
測定時間 | 1~5時間 | 1~1.5時間 |
長所 | 検出感度が高く擬陽性が少ない。 | 測定時間が30~90分と短く目視での陽性確認が可能。 |
短所 | 熟練した技術を要する対象遺伝子の前処理が必要となる。検査結果にも時間を要する。 | 対象遺伝子精製の前処理が必要で感度はRT-PCR 法に劣る |
PCR法もLAMP法も、対象ウイルスの遺伝子を増幅させて検査する点においては共通します。ただし、検体処理数や感度(検出限界)、必要な装置、検査時間などは、上表のとおり異なります。
4. 「リアルタイムPCR法」とは? その特徴を理解しよう
リアルタイムPCR(RT-qPCR)法とは、PCRの増幅量をリアルタイムでモニターし解析する方法です。リアルタイムPCR専用の装置(サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化したもの)が用いられます。
原理の詳細は、タカラバイオ社の「はじめてのリアルタイムPCR」の動画にて、わかりやすく解説されています。動画を見ると、原理(蛍光検出2種、qPCRデータ取得法、Ct値の説明等)、RT-qPCRの実験フロー、逆転写反応によるcDNA合成、相対定量などについて、理解を深めることができます。
5. 「PCR検査」の実施に求められる検査環境
リアルタイムPCR法にて遺伝子検査を実施する場合、検体(精製前処理済)に加え、下記の検査環境を整える必要があります。
- リアルタイムPCR装置
- プライマー
- 装置専用のサンプルチューブ
- リアルタイムPCR用の試薬
PCR検査に必要な機器・装置は、各社からさまざまな製品が販売されています。
また、装置の操作にあたっては、マイクロピペットやチップが欠かせません。清浄な実験環境確保のためには、クリーンベンチも準備しておく必要があります。
サイサチでは、こうした機器についても数多くの製品を取り扱っています。下記に製品一覧ページのリンクを貼っておくので、必要に応じて活用してみてください。
⇒ ピペット・ディスペンサーの製品一覧はこちら
⇒ クリーンベンチの製品一覧はこちら
検査を実施できる公的機関や民間検査会社が増加した影響もあり、リアルタイムPCR検査のニーズは拡大しています。ぜひご検討ください。
参考資料:国立感染症研究所、厚生労働省、日本感染症学会、栄研化学、タカラバイオ、元気グループ
※記事内容は2021年6月7日時点となります。
本記事は、リカケンホールディングス株式会社が運営する
研究者の皆様に革新とひらめきをもたらす情報発信サイト 『サイサチ(Science Search)』がお届けしています。