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【試薬の温度管理】輸送から保管まで基礎解説

2021年4月30日 お役立ち記事
 

試薬は、製造から輸送、開封、使用、保存、廃棄までの過程において、定められた温度での管理が求められます。試薬のライフサイクルにおける温度管理の基礎知識をおさえ、安全に目的の効能を実現させましょう。

この記事では、試薬の保管、梱包、輸送における取り扱いのポイントを紹介します。

目次

1. 試薬の取り扱い温度を確認するには

試薬を安全に使用するには、取り扱い及び保管上の情報にもとづき、適切な温度管理を行いましょう。通常、以下より温度管理に関する情報を確認することができます。

  • GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)
  • SDS(安全データシート)
  • 試薬製造会社が発行するデータシート
  • 商品ラベル
  • 商品カタログまたはホームページの商品詳細ページ

注1. 常温保存の場合、記載がないことがあります。

2. 6段階の温度帯があります

試薬の管理に求められる温度帯は、試薬ごとに異なります。概ね6段階に大別され、一般的には「室温」「冷所」「冷蔵」「冷凍」「超冷凍」「超低温」のいずれかに設定されます。

なお温度設定における表現や温度幅は、各メーカー、JIS、日本薬局方、食品添加物公定書により細部が異なります。
保管条件は製品のラベル表示に従ってください。保管条件は製品情報ページでもご確認いただけます。

温度帯リスト

温度帯温度主な保管番所
室温5~30℃空調管理された室内
冷所1~15℃空調管理された室内、冷蔵庫、保冷庫
冷蔵1~5℃冷蔵庫、保冷庫
冷凍-10℃~-20℃冷凍庫
超冷凍-70℃~-80℃超低温槽
超低温-150℃~-196℃超低温槽、液体窒素保存容器

*室温、冷所、冷蔵は試薬の凍結を防ぐことができる下限温度が条件となります。
*一部冷凍品でも凍結不可の製品があります。

3. 輸送は「常温・冷蔵・冷凍」の3温度帯

試薬製造会社は、試薬の種別に設備を用意し、製造から出荷まで厳密な温度管理下で試薬を貯蔵します。その後、試薬を輸送する際には、専門の販売業者もしくは運送会社に郵送を委託します。

国内の主な運送会社は、「常温・冷蔵・冷凍」の3温度帯を、輸送温度の主カテゴリーとしています。

試薬を安全かつ長持ちさせるべく、試薬製造会社はこれらの3温度帯に加え、さらに細分化した温度指定と輸送条件を、運送会社に対して試薬ごとに設定します。

※試薬の運送方法は運送会社ごとに取り決めがありますのでご注意ください。

4. 3温度帯別の梱包方法

試薬の輸送条件に合わせ、試薬製造会社は適した梱包を行い発送します。

運送会社の3温度帯での輸送にあたり、各温度帯の試薬は耐衝撃、保温を目的として下記梱包が推奨されています。

  • 常温品:試薬が破損しないよう段ボール箱にエアーパッキンや緩衝材を詰めて梱包する。
  • 冷所・冷蔵品:発泡スチロール材質の箱を用意し、試薬が冷媒に直接触れないようエアーパッキンで隔てる。耐衝撃を考慮し、発泡スチロール箱をさらに段ボール箱で梱包する。
  • 冷凍品:発泡スチロール材質の箱を用意し、試薬がドライアイスを直接触れないようにエアーパッキンで隔てる。耐衝撃を考慮し、発泡スチロール箱をさらに段ボール箱で梱包する。
  • 超冷凍品・超低温品:発泡スチロール材質の箱にドライアイスを敷き詰め、試薬がはいったチューブに直接ドライアイスを接触させる。耐衝撃を考慮し、発泡スチロール箱をさらに段ボール箱で梱包する。

たとえ適正な保存条件下でも、試薬は人体や環境に有害な成分を含んでいる場合があります。輸送の際には温度管理にくわえ、破損を防ぐ目的から厳重な梱包が行われます。

5. 輸送と保存における管理温度は異なる

温度変化に敏感な試薬の数は多く、管理温度が行き届かない場合、変性や膨張する危険性が高くなります。

容器破損などの原因となりうるため、輸送温度と保存温度は、同様に定められているとは限りません。試薬製造会社は、輸送期間中に商品の品質や安全性を厳格に保つべく、輸送温度条件を別途設定して発送するケースがあります。

そのため、郵送で受け取った際の輸送温度と、保管時の試薬の取り扱い温度が異なることもあるでしょう。試薬が手元に届いたら、SDSやラベルに記載のある管理温度を確認し、適した温度管理設備で保管してください。

6. 試薬の変性による使用期限

たとえ製造からしっかりと温度管理がなされたとしても、試薬の種類や純度、また空気を含めた不純物の混入などの影響により、試薬の劣化は避けられません。

製造企業は安全に試薬を利用するための使用期限を設けています。手元に試薬が届いたら、かならず使用期限を確認しましょう。なお通説的には、未開封状態において冷蔵品で6か月、冷凍品で1年間、試薬は保存できると言われます。

一方、保証を含めた使用期限を設けていないメーカーもあります。発送済みの試薬についてはその後の温度管理状況の保証がないことから、返品を原則受け付けない会社も多くあります。注文の際には注意して確認しましょう。

購入後の試薬の保管、また試薬の持ち運びを運送会社に依頼する際、ぜひ参考にしてください。

出典:日本試薬協会
参考文献:富士フイルム和光純薬株式会社 他

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